このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は9月20日、10月4日と8日のコメント「トーマツでなくトーマス!?国税OBの脱税指南事件を痛烈批判」「生計一の解釈が異なる判決」「テレワーク定着と給与の拘束性」の3件をご紹介します。
国税OBの脱税指南事件を痛烈批判
国税OBによる脱税指南事件が、物議を醸しています。
読売新聞オンライン(2021年9月20日付)によると、経営コンサルティング会社「トーマスコンサルティング」と顧問先の約50社が東京国税局の税務調査を受け、約20億円の所得隠しを指摘されており、トーマス社の元社長が「赤字法人」を使った税逃れを指南していたと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、懲戒処分前に税理士を辞めて、頃合いを見て税理士を再開するという税理士法逃れは、普通の税理士は知らないはずで、国税時代に身に着けた悪知恵だと痛烈にコメントされています。
東京国税局OBという肩書を信頼して、指導を受け入れていた顧問先も多かったと思います。また大手税理士法人と誤解されかねない名称でもありました。脱税指南と並んで、大手税理士法人の名前を想起させる法人名や、懲戒処分逃れの行為にも悪質さを感じる事件です。
生計一の解釈が異なる判決
税務では法が重視されますが、条文に使われている用語の解釈をめぐり、訴訟が起きたといいます。
T&A master(2021年9月27日号・No.899)によると、「生計一」の解釈が所得税と小規模宅地では違うと判断されたと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、相続税と所得税で同じ用語でも意味が違うなら、多くの大学者が言っている「借用概念論」は全くの嘘だとコメントされています。
「生計一」は、税法によって意味が異なり、解釈が難しいと言われている用語です。専門家である税理士でも判断がつきにくい用語の使用は、法改正で避けられないものなのでしょうか。
テレワーク定着と給与の拘束性
テレワークが勤務形態の選択肢の一つとして定着しつつあり、給与と外注の判断が難しくなっています。
この点、T&A master(2021年9月27日号・No.899)では、裁判所は、テレワークであっても拘束性を軸に考えていると伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、雇用主と外注先がそれぞれ責任を持って判断することが妥当としつつ、拘束性を回避することがポイントだとコメントされています。
テレワークは一般的になりつつありますが、導入されてからまだ日が浅い働き方でもあります。実態に法律が追いつくまでには、もう少し時間がかかりそうです。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)