このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は3月9日、15日、17日、22日のコメント「元従業員を介した同族会社取引」「元従業員への支払は外注費か給与か」「低解約返戻金逓増定期保険に遡及課税の疑い」の3件をご紹介します。
元従業員を介した同族会社取引
会社の私物化がされやすい環境にある同族会社では、租税回避行為が行われることを防ぐため、行為計算否認の規定が設けられています。
税のしるべ電子版(2021年3月3日)では、元従業員を介して同族会社から仕入れた眼内レンズ等を必要経費に算入した事案について、請求人の所得税の負担を不当に減少させるものに当たるとして更正処分等が行われおり、この処分は妥当とする裁決が出たと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、行為計算否認はほとんどないと高を括る国税OBは多いが、慎重な判断が必要とコメントされています。
今回の事例は元従業員を介して行われていますが、実態を重視した妥当な裁決となっています。
元従業員への支払は外注費か給与か
外注費は消費税申告で課税仕入れにできるため、企業にとっては、給与よりも外注費のほうが節税ができる利点はありますが、外注費にできるのはあくまで実態が伴った上での話です。
税のしるべ(令和3年3月8日号)によると、塗装工事業等を営む法人が作業員に支払った報酬について、給与所得であって課税仕入(外注費)に当たらないとした更正処分等を支持する裁決が下ったと、伝えています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、給与外注の対策として国税に事実関係を掴まれないことが肝とコメントされています。
今回のように、実態は従業員と変わらないのに、外注費として扱うために退職するようなケースでは否認されても致し方ありませんが、初めから外注とする場合も業務委託契約書などを用意して、給与外注の税務調査に備えておくと良いかもしれません。
低解約返戻金逓増定期保険に遡及課税の疑い
企業の節税対策で保険が用いられることは良くありますが、税制の見直しで契約者が遡及的に不利益を被るかもしれないと言うのです。
朝日新聞DIGITAL(2021年3月16日付け)によると、国税庁が低解約返戻金逓増定期保険の税務の取り扱いを見直す方針を固めたと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、保険節税が国税のさじ加減で封じ込められているのは問題として、法改正の必要性に言及しています。
次に、税務通信No.3647(2021年3月22日)では、低解約返戻金逓増定期保険の改正案について、「解約返戻金<資産計上額×70%なら資産計上額で評価」に変更されると伝えています。
これに関して松嶋先生は、改正案自体は良いが、2019年7月8日以降に契約した保険について、改正日後に名義変更した場合に適用になるため、遡及課税の疑いが強いと、語気を強めています。
低解約返戻金逓増定期保険は、解約返戻率の低い時点で低い時価評価額で会社から個人に保険契約の名義変更をすることで、会社から個人に利益が移転できるため、節税策として利用されていました。今後、新ルール改正日後に名義変更すると新ルールが適用されてしまうそうなので、当該保険を契約されている方はお気をつけください。
税務調査対策ノウハウを無料で公開中!
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋による税務調査対策に効果的なノウハウをまとめたPDFを無料で公開中!ご興味のある方は下記サイトよりダウンロードください。
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)