2021年2月8日、freee株式会社から、小規模法人に向けたクラウド申告ソフト「申告freee」の提供が開始された。
本記事では、2021年2月25日に、「申告freee」のサービス提供範囲の拡大を記念して開催されたオンラインセミナー「スモール法人向け 電子申告・セルフ申告という選択肢」のレポートをお届けしたい。
『スモール法人向け電子申告・セルフ申告という選択肢』セミナー概要
- 申告freeeの小規模法人へのサービス提供開始の目的と意義について
- 利用方法のデモンストレーション/freee株式会社 プロダクトマネージャー 高木悟
- 電子申告制度の概要・利用方法・法人設立時の留意事項/国税庁 情報技術室 中島文彦 氏
- 会計事務所からみた申告について・小規模法人の申告のこれから/リライル会計事務所 野口五丈 氏
- 質疑応答
※記事内のスライドはすべてセミナー資料からの引用です。
本記事の目次
- セルフ申告を正確に効率的に
- 新設法人やスモール法人の使いやすさを追求、セルフ申告ソフト『申告freee』
- 税務手続の電子化が進む中、e-Tax対応のメリット
- 会計事務所では業務効率化と残業時間削減、リクルート好転も
セルフ申告を正確に効率的に
会社設立当初から税理士に依頼するのではなく、会社が大きくなってきたら頼もうと考える企業は意外に多く、スモール法人のセルフ申告のニーズは多い。
その一方で、企業が使える法人税申告ソフトは、一般的な選択肢となるまでは普及していない。
freee株式会社 プロダクトマネージャー 公認会計士/税理士 高木悟氏
プロダクトマネージャーの高木氏は、この現状に課題を感じ、税務申告が正確に効率的にできる世界を実現するため、申告freeeの開発に至った。
新設法人やスモール法人の使いやすさを追求、セルフ申告ソフト『申告freee』
もともと会計事務所向けプロダクトとしてリリースされていた『申告freee』だが、現在会計事務所に依頼していない新設法人や小規模な法人にも、2月8日からサービスが開始された。
申告freeeの料金プラン
法人税申告 ベーシックプラン
年払い
24,800 円 / 年額(税別)
主な機能
- 一般的に利用する国税・地方税・その他の添付書類の作成
- 申告書類の提出機能(電子申告対応)※電子申告はWindowsのみ
- メールサポート
※資本金または出資金の額が1億円超の法人など利用できない場合もあります。詳しくは『申告freee(freee株式会社Webサイト)』でご確認ください。
セミナーでは、高木氏より申告freeeのデモンストレーションが行われた。
今回の申告freeeは、税務や会計の専門性がない一般ユーザーも正確に効率的に申告できることを目的としている。そのため、操作が簡単で、計算ミスが多い箇所については自動化されるなど、操作性に特徴がある。
会計freeeと申告freeeが一気通貫でデータ連携
今までのソフトでは、法人名、資本金の額、決算期間、事業所の設定などの基本情報を、会計ソフトと申告ソフトにそれぞれ入力する必要があった。
その点、申告freeeは会計freeeと連携しているので、会計freeeに登録されているデータを申告freeeに取り込むことができる。
二重に入力する手間が省けたり、どちらか一方だけ入力してして、もう片方のソフトの情報は古いままという事態も避けることができる。
専門知識がなくても自動で帳票選択
法人税の申告書は非常に多数の帳票になっているので、知識のない人が自分で選ぶのは難しいだろう。この点、申告freeeは、自動で帳票選択されるのが特徴だ。
例えば、会計freeeに交際費が計上されていれば、交際費に必要な別表15が自動で選択されたり、固定資産があれば別表16を自動で選んでくれるので、必要な帳票を自分で探し出す手間が省けることになる。
法人税申告の金額も連携
会計と申告ソフトを別々に利用している場合、申告ソフトで計算した金額を会計ソフトに入力し、その結果をまた申告ソフトに打ち直す必要がある。
ところが申告freeeでは、このような入力は不要だ。税額が計算されたあとに「会計freeeに登録」を選択すれば、会計freeeの取引箇所に法人税が自動で計上される仕組みになっている。
またWeb上で法人税申告freeeハンドブックが用意されていて、作業のステップごとにスライド形式で入力方法やチェックポイントが掲載されている。ハンドブック通りに作業すれば、初心者でも、平均して2時間程度で申告書が作成できるのも嬉しい。
税務手続の電子化が進む中、e-Tax対応のメリット
セミナーでは、国税庁情報技術室から中島氏が登壇して、設立して間もない法人や、これから設立を考えている人向けに、各種届出やe-Tax、電子納税についての制度説明も行われた。
国税庁 情報技術室 中島文彦 氏
地方公共団体、法務局、年金事務所など複数の行政機関で必要だった届け出が1回で済む「法人設立ワンストップサービス」について、制度内容や利用方法の説明が行われた。
従来は、同じような届け出を複数の行政機関に届け出なければならなかったが、令和2年1月から始まったこの制度を利用すれば1回で済むので、法人設立期の貴重な時期には特にメリットの大きい制度だ。
また令和2年4月から大規模法人の電子申告義務化が始まり、税務手続きの電子化が一層進むことが予想されている。
中島氏から、freeeでe-Taxを利用すれば、データをそのまま使って申告ができ、入力誤りや事務処理ミスの削減効果が期待できるため、e-Taxに対応したソフトを選んでe-Taxを利用して欲しいと説明があった。
会計事務所では業務効率化と労働時間削減、リクルート好転も
2月6日に一般ユーザーにリリースする以前も、申告freeeは会計事務所で利用されてきた。すでに、業務効率化や労働時間削減の効果を上げている会計事務所は多い。
freee認定5つ星アドバイザーのリライル会計事務所も、2015年と2020年では、記帳代行時間4割削減、残業時間6割削減でき、大きな効果を上げている。
なぜこのような業務効率化が可能になったのか、freee認定5つ星アドバイザーのリライル会計事務所の野口五丈代表が、「申告freeeのお気に入りポイント」と題して、申告freeeの優れた特徴について解説した。
リライル会計事務所 野口五丈 氏
データインポートとエクスポートからの解放
会計ソフトと申告ソフトが別のプロダクトの場合、決算期になると、会計ソフトからデータをエクスポートし、申告ソフトにインポートする作業が一般的に行われているだろう。だが、決算整理で修正が行われる都度インポートとエクスポートを行うことを、煩わしく感じたことはないだろうか。
リライル会計事務所でも、データを更新するたびバックアップファイルが増えてしまった結果、どれがマスターデータなのか分からなくなり、古いデータで決算を組んでやり直した経験があると言う。
この点、freeeは会計と申告が連携しているので、インポートとエクスポートが不要だ。
決算期の忙しい時期に、マスターファイルを探すイライラがなくなり、余計な作業もなくなる。野口氏は、会計事務所にとって大きなメリットである、freeeを使う一番大きなポイントだと語る。
もっと楽に、正確に、申告できる世の中へ
渋谷に事務所を構えるリライル会計事務所。土地柄、スタートアップのクライアントも多く、数多くのスタートアップの税務に対する悩みに耳を傾けてきた。
「創業期で売上や資金繰りが苦しく、税理士に頼むコストの負荷が重い。」
「自分で申告書を作ることが多いが、慣れない状況で大変で決算が合わないことも多い。」
大変な苦労をして自力で申告書を作成しても、税額が正確に計算されていて見た目にもきんとした申告書でなければ、融資を受けられないこともあり、資金需要の大きいスタートアップにとって、深刻な悩みとなっていた。
今回、申告freeeが一般ユーザに向けてリリースされたことで、税理士に依頼できないスモール法人が、楽に、正確に、かつコスト的負担も軽く申告書が作成できるようになりそうだ。