本日、令和2年度(2020年度/第70回)税理士試験の結果が発表されました。
合格された皆様、おめでとうございます。
また、惜しくも合格とはならなかった皆様、来年は良い結果をつかめますよう祈念しております。
さて、今年の税理士試験の結果に関する考察をお届けします。
今年の税理士試験合格発表のポイントは以下です。
令和2年度・第70回 税理士試験合格発表のポイント
- 合格者の総数は前年比14名の微増(実人数)
- 合格者数とともに合格率もアップ!
- 30歳以下の官報合格者数は139名
受験者・合格者数と合格率
合格者は5,402名、昨年から14名の微増
本年の税理士試験の受験者・合格者数と合格率は以下のようになっています。
令和2年度・第70回 税理士試験合格発表の概要
- 受験者数:26,673名(延べ36,845名)
- 合格者数合計(実人数):5,402名(官報合格者数:648名、一部科目合格者数:4,754名)
- 合格率:20.3%
本年の合格者(一部科目合格者含む)は5,402名であり、昨年の5,388名から14名の増加となっており、わずかながらですが増加になりました。また、合格率も昨年の18.1%から20.3%へと上回る結果となりました。
税理士試験は、平成29年度(2017年度)の税理士試験で財務諸表論が合格率29.6%という異常値となった例外の年を除けば、一昨年までの数年間、受験者数、合格者数ともに減少傾向にありました。昨年、本年と2年連続で合格者数が増えたことで、業界にもやや明るい兆しが見えてきたと言えるかもしれません。
一方で、一昨年から昨年にかけての合格者は672名増でしたが、昨年から本年にかけては14名増ということで、2年連続の増加ではあるものの、増加幅は小さいものとなりました。
また、以下のグラフの通り、受験者数は平成22年度をピークに右肩下がりですので、中期的には受験者数の減少を止めることも業界の課題と言えるでしょう。
【令和2年度(第70回)税理士試験の受験者数・合格者数と推移】
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合格率に関しては、多少の変動はありつつも、中期的には15~20%の間で推移しています。
【令和2年度(第70回)税理士試験の合格率と推移】
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官報合格者の数は、中期では減少傾向にあるものの、一昨年の672名から昨年は749名へと増加しましたが、今年は648名とまた減少しました。増減を繰り返しながら長期的には緩やかに合格者が減少している状況です。
【令和2年度(第70回)税理士試験の官報合格者数と推移】
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男女別の合格者数
女性の合格者比率は28.6%
合格者の性別は以下のとおりです。合格者に女性が占める割合は28.6%となっており、一昨年の26.6%、昨年の27.9%よりさらに上昇、合格者全体の約4分の1が女性となっています。
税理士試験の合格者総数が大きく増えていないことから、女性の合格者数も大きくは増えてはいませんが、女性比率はこの4~5年では27%前後を維持しています。
令和2年度・第70回 税理士試験合格者の男女比
- 合格者合計:5,402名(男性:3,859名、女性:1,543名)…女性比率28.6%
- 官報合格者:648名(男性:490名、女性:158名)..女性比率24.4%
- 一部科目合格者:4,754名(男性:3,369名、女性:1,385名)..女性比率29.1%
【令和2年度(第70回)税理士試験合格者に占める女性人数・比率と推移】
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昨今の税理士業界では、人材不足の影響もあり、人材のさらなる活用や業務効率化が進み始めており、女性が働きやすい環境を整える会計事務所も見られつつあります。
また、2020年はコロナ禍の影響で、会計事務所業界においてもリモートワークの導入が進むこととなりました。
特に東京などの都市圏の会計事務所では、コロナ禍以前より、結婚・出産後も女性が復帰しやすい制度を整えたり、主婦向けにリモートワークや時短勤務制度を導入したりする会計事務所も一部では見られはじめていましたので、今後、業界全体で女性が働きやすい環境がより一層整備されていくのではないかと考えられます。
会計事務所業界の仕事は手に職がつき、また、税理士になれば性別問わず独立もしやすい業界ですが、リモートワークが浸透すると自宅から顧客との面談を行えるなど、男女問わず仕事と家庭の両立が行いやすい環境が実現できます。今後こういった流れが拡大していくかどうかで、女性の受験者数、ひいては、受験者数全体にも影響が出てくるのではないでしょうか。
年齢別の合格者数
30歳以下の官報合格者は139名!
年齢別の合格者数は以下のとおりです。例年通り若い年齢ほど合格率が高くなっています。
30歳以下の官報合格者は139名と例年通り若手の官報合格者は少ない状況であり、一昨年の150名、昨年は175名へと増加していましたが、今年は再び減少となりました。
この官報合格者139名という数字は、47都道府県で平均すると1都道府県当たり約3名という人数になり、若手税理士の希少価値の高さがわかる数字ともなっています。
【令和2年度(第70回)税理士試験の年齢別合格者数・合格率】
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一方で、30歳以下の官報合格者数は以下のグラフの通り、年々減少傾向にありますので、高齢化の進む税理士業界において、若手税理士の供給が少ないことは大きな課題と言えるでしょう。
【30歳以下の官報合格者数の推移】
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科目別の受験者数・合格者数・合格率
合格率最高は簿記論の22.6%、最低は相続税法の10.6%
科目別の受験者数・合格者数・合格率は以下のとおりです。
例年の傾向通り、簿記論と財務諸表論の合格者数や合格率が高い傾向にあり、最も合格率が高かったのは簿記論の22.6%でした。逆に、合格者数が最も少なかったのは事業税の44名、合格率が最低だったのは相続税法の10.6%でした。
全体の合格率は、一昨年から昨年にかけて12.8%→15.5%と増加していましたが、本年は昨年よりもさらに1.8%アップし17.3%となっています。
【令和2年度(第70回)税理士試験の科目別受験者・合格者数・合格率】
※合格者数・受験者数は複数科目受験者・合格者を含む延べ人数。
※クリックすると表が拡大します。
コロナ禍でも強い税理士や会計事務所経験者の就職・転職
2020年はコロナ禍により、世の中の状況も大きく変わることとなりました。
一方で、コロナ禍やそれに伴う失業率の悪化にも関わらず、会計事務所の人材不足はそれほど緩和されておらず、会計事務所での実務経験者や税理士、税理士試験の科目合格者の採用ニーズは引き続き高い状況にあります。
受験者数や合格者数の減少に伴う人材への渇望感も相まって、不況に強い税理士業界という特徴が顕著に現れていると言えるでしょう。
また、IT化が遅れていると言われる会計事務所業界ですが、コロナ禍によるリモートワークの浸透や、クラウド会計ソフトのシェア拡大により、着実にIT化も進展しています。
不況への強さやITの活用など、税理士資格や会計事務所業界の魅力をより一層PRしていくことによって、受験者数や合格者数の増加へとつなげ、業界の魅力をより多くの人に伝えていく必要があるでしょう。
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※参考:本記事は令和2年度(第70回)税理士試験結果(国税庁)をもとに作成致しました。