『弥生会計』でお馴染みの弥生株式会社様(以下、弥生)では、税理士や公認会計士の方々を対象にしたパートナープログラム「弥生PAP」(やよいぱっぷ)を運営しており、その会員の皆様向けに弥生や業界のトレンドをお届けする弥生PAPカンファレンスを年2回開催しています。
弥生PAPカンファレンスは、例年、全国7会場(東京、大阪、名古屋、広島、福岡、札幌、仙台)で開催されていましたが、今年は新型コロナウィルスの影響で、春の開催が見送られておりました。
今回の弥生PAPカンファレンス2020年秋は、Zoomウェビナーを使用しての初のオンライン開催となり、「社会的システムのデジタル化」と、会計事務所向け新サービス「記帳代行支援サービス」の発表をメインコンテンツに開催されました。
余談ですが、冒頭で岡本代表より、「弥生10,000会員突破感謝プレゼント」が発表されました。カンファレンスの中に出てくる3つのキーワードを入力して応募するとプレゼントが当たるという企画です。昨今、会計事務所を取り巻く環境が急速に変化しており、常に緊張感を持ちながら業務に当たられている方も多いと思いますが、遊び心とホスピタリティが感じられるカンファレンスで、リラックスした気持ちで参加することができました。
今回は、前編、中編、後編の3回に渡り、2020年9月17日に開催された弥生PAPカンファレンス2020秋の模様をお届けします。
※記事内のスライドはすべて弥生PAPカンファレンス2020秋にて用いられたものです。
弥生PAPカンファレンス2020秋プログラム
- 弥生の現況と目指す方向(弥生株式会社 代表取締役社長 岡本浩一郎)
- 記帳代行支援サービスのご紹介(弥生株式会社 営業推進部 加藤健一、パートナー支援課 松原里英)
- 弥生PAP会員による事例発表
- 記帳代行支援サービスの活用とその効果について(KVI税理士法人 代表社員・税理士 岡森久倫、西村修斗)
- インフォメーション~弥生 21 シリーズのご紹介~(弥生株式会社 営業推進部 パートナー支援課 山田泰広)
本記事の目次
- 業務効率化が至上命題。「社会的システム・デジタル化研究会」発足
- キーワードは業務プロセスのデジタル化
- 年末調整は確定申告の簡易版のはずが、年々複雑化
- 社会的システムのデジタル化に向けたアジェンダ
- 電子インボイス推進協議会を発足。圧倒的業務効率化を目指して
業務効率化が至上命題。「社会的システム・デジタル化研究会」発足
今年9月30日に、デジタル庁の新設に向けて「デジタル改革関連法案準備室」が設置されました。労働人口の減少が進み、テクノロジーが進化していく中、行政のデジタル化が急ピッチで進んでいます。
デジタル化の必要性は行政だけの問題にとどまらず、「安定的に職員を採用することが難しくなっており、デジタル化による業務効率化は避けて通ることができない」と感じている会計事務所の方も多くいらっしゃると思います。
このような現状を踏まえ、2019年12月に、弥生株式会社を発起人として、SAP、OBC、PCA、MJSの5社を加えた企業が参加メンバーとなり、「社会的システム・デジタル化研究会」が立ち上げられました。
カンファレンスの前半では、弥生株式会社の代表取締役社長 岡本浩一郎氏が、社会的システムをデジタル化する必要性と、具体的な取り組み、今後の潮流について、見解を述べました。
前編では、岡本代表のプレゼンテーションをお届け致します。
キーワードは業務プロセスのデジタル化
「社会的システム・デジタル化研究会」発足のきっかけは、2年前の年末調整で配偶者特別控除が複雑化したことによるものでした。
現在の年末調整の仕組みについて、岡本代表は「普通の従業員が理解できないものになってしまった。仕組みを変えることはできないのかと考えたとき、キーワードとなったのは、電子化とデジタル化だった。現在も紙情報の電子化は行われているが、業務プロセスを見直しデジタル化することが必要である。」と説明されました。
年末調整は確定申告の簡易版のはずが、年々複雑化
社会的システム・デジタル化研究会発足のきっかけとなった年末調整について、岡本代表から考察が示されました。
- 本来、年末調整は確定申告の簡易版という位置づけ。だが現状は、確定申告より難しくなっている。
- ルールが複雑化し正しい理解が追い付かない(配偶者特別控除など)。
- 12月の繁忙期に作業が集中するため、事業者にとって重い負担となっている。
年末調整は、配偶者特別控除などの制度変更以外にも、確定申告とは違って年度途中に行うため本人の所得の見積もりが必要となり、見積もりが外れたときはやり直さなければならない点で、確定申告よりも難しくなっていると、岡本代表は指摘されています。
また、共働き世帯が当たり前の時代で控除内で働く人は減ってきており、いくら稼いでいるのかセンシティブな質問もしなければならない点にも難しさがあると、分析しました。
年末調整の在り方については、岡本代表は、シャウプ勧告にも言及されました。
戦後、賦課課税から申告課税へと変わる中で導入された年末調整という制度は、シャウプ勧告によると実は、「税務当局が全国民の確定申告に対応する余力がなかったため、事業者が実質的な申告業務を肩代わりして行う一過性の措置」との位置付けで導入された背景があるとのことです。また、当時の時代背景から、すべて紙を前提とした業務として整備されています。
そのため、年末調整業務にかかる事業者の負担を減らすために、事業者による紙ベースでの年末調整業務から、業務プロセスをデジタル化して再構築していくことが必要であると、岡本代表は示されました。
社会的システムのデジタル化に向けたアジェンダ
業務プロセスのデジタル化の必要性について説明した後、岡本代表より、具体的なデジタル化の見通しについて、総括されました。
「年末調整」「確定申告」「インボイス」についてデジタル化を再構築すべきであり、短期的には2023年から導入されるインボイスのデジタル化に取り組み、中期的には年末調整や確定申告、社会保険の各種制度等についてもデジタル化をもとにゼロから見直す必要があると、岡本代表は大局的に分析されました。
電子インボイス推進協議会を発足。圧倒的業務効率化を目指して
2023年10月のインボイス義務化に向けて、2020年7月29日に、弥生、ならびに、インフォマート、SAP、OBC等の10社が発起人(弥生株式会社が代表幹事法人)となり「電子インボイス推進協議会(EIPA)」が設立されました。
民間主導で電子インボイスの標準規格を作る動きが広まっていることが日本経済新聞でも大きく報道されており、既に50社弱の企業が参画するなど注目を集めています。
- 国内の事業者が共通して利用できる電子インボイスの仕組みを作り、普及させること
- 電子インボイスの標準仕様を普及促進させること
- デジタル化によって圧倒的な業務効率化を実現すること
電子インボイス推進協議会を立ち上げた趣旨ついて、「今は紙ベースの商流だが、今後、電子インボイスを普及させ、その先に電子受発注を見据えている。デジタル化によって業務効率化を実現したい。」として、岡本代表は商流のデジタル化を達成するための道筋を示されました。
デジタル化がどこに行き着くのかが不透明なまま日々の業務が少しずつ変化している会計業界ですが、今後どのような道筋を辿り、どこを目指して変化していくのか、大きく展望が示されたプレゼンテーションでした。
中編では2020年秋から提供開始される弥生株式会社の記帳代行サービスについての発表をお届けします!
→弥生が「会計事務所向け記帳代行支援サービス」をスタート、その概要とは?:弥生PAPカンファレンス2020秋レポート(中編)
弥生PAPで会計事務所経営に必要な情報を!
「弥生PAP」とは、弥生株式会社と会計事務所がパートナーシップを組み、弥生製品・サービスを活用して、中小企業、個人事業主、起業家の発展に寄与するパートナープログラムです。2020年8月時点で10,000以上の事務所が加入。税務サービスを提供する会計事務所様はぜひご加入をご検討ください。
転載元:年末調整や電子インボイスなど「社会的システムのデジタル化」を弥生はどう見据えているのか?:弥生PAPカンファレンス2020秋レポート(前編)(公認会計士ナビ)