このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は10月26日、29日、30日のコメント「10年以上無申告でも重加算税は違法」「フリーランス交通費の源泉徴収は緩和されず」「キャバクラキャスト報酬の取り扱い」の3件をご紹介します。
10年以上無申告でも重加算税は違法
悪質な無申告は重加算税が賦課されると考えるのが普通だと思うのですが、異例の裁決が出たと話題になっています。
2020年10月19日号の税のしるべによると、10年以上一度も確定申告をしていなかったため原処分庁が重加算税を賦課決定したものの、数人の税理士に税務代理を断られ続けていたことから申告はしようとしていたと認められ、重加算税の賦課決定は違法と判決が下されたそうです。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、マジで面白い裁決、税の世界では最善を尽くそうとした努力とそれを説明できる資料が必要とコメントしています。
なぜ何人もの税理士に税務代理を断られ続けたのかも気になるところですが、10年以上無申告であったにも関わらず重加算税賦課を違法とした裁決は画期的で、今後の指針になりそうです。
フリーランス交通費の源泉徴収は緩和されず
フリーランスが立て替えた旅費交通費は実際の支払額なので源泉徴収するのはおかしいという議論があります。
これに関して、税務通信 No.3626(2020年10月19日)によると、タクシーや高速道路の利用など、「宛名のない領収書」を発行することが慣例となっている場合についても源泉徴収は必要であり、源泉徴収しないためには発行者に手書きで「会社宛ての領収書」を作成してもらう等の対応が必要と伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、これでは、何の規制緩和にもなっていない、押印と同じくらい馬鹿らしいとコメントしています。
フリーランスという働き方を選択することで、税制上の不利益を被ることのないように、旅費交通費の実費立替分については源泉徴収不要という英断が期待されます。
キャバクラキャスト報酬の取り扱い
キャバクラで働くキャストへの報酬は、外注費なのでしょうか、それとも給与なのでしょうか。
これに関して、税務通信 No.3626(2020年10月19日)によると、東京地方裁判所は、国の行った源泉所得税等の納税告知処分及び不納付加算税・重加算税の各賦課決定処分は適法と判断したと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、キャバクラキャストは給与課税と判決出たので、実務で外注処理するなら注意が必要とコメントしています。
キャバクラキャストの報酬の取り扱いについて新たな判決が出たことで、キャバクラ業界の会計処理や雇用方法に影響を与えることになりそうです。
税務調査対策ノウハウを無料で公開中!
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋による税務調査対策に効果的なノウハウをまとめたPDFを無料で公開中!ご興味のある方は下記サイトよりダウンロードください。
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)