このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は8月3日、12日、21日のコメント「フリーランスへの立替払い源泉に国税庁が見解」「ワンストップ特例転居は手続必要」「中途退任役員への賞与損金算入の可否」の3件をご紹介します。
フリーランスへの立替払い源泉に国税庁が見解
フリーランスで働く人が増えていますが、まだまだ新しい働き方であるため、制度整備は道半ばという感じです。そのような中、フリーランスが支払う交通費など実費に関する取扱いについて、国税庁から見解が出されました。
税務通信No.3615(2020年7月27日号)によると、フリーランスが旅費・交通費等の立替払いをしたケースで、実態として会社が直接支払うケースと同視できれば、源泉徴収不要と取り扱って差し支えないとの見解が、国税庁より示されています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、領収書の名義が重要で「上様」だとアウトになりそうなので、注意するようにコメントしています。
立替分なのに所得税が源泉されるので違和感がありましたし、給与所得者が交通費を精算する場合と比較して不公平感もあったと思いますが、国税庁から見解が示されたことで、フリーランスに関する制度が一歩前進したという印象です。
ワンストップ特例転居は手続必要
給与所得者でふるさと納税を利用しているなら、わざわざ確定申告せず、ワンストップ特例を使うという方が大半ではないでしょうか。ところが、引っ越しの連絡をせずそのまま放置すると、ワンストップ特例が使えなくなるというのです。
税務通信No.3616(2020年8月3日号)によると、ワンストップ特例申請書の提出後に転居した場合、寄附先に対して「申告特例申請事項の変更届出書」を提出しなければ、ワンストップ特例の適用がなかったものとみなされてしまうと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、失念してもリカバリーできるが、時効にならないよう確実に対応することが必要とコメントしています。
日頃、税理士や会計事務所とお付き合いがある方なら別ですが、給与所得者の場合なかなかこのようなアドバイスを受ける機会もないと思いますので、これを機に注意喚起する必要がありそうです。
中途退任役員への賞与損金算入の可否
役員賞与は、税務署に提出した「事前確定届出給与に関する届出書」で 支給時期及び支給金額が確定しているため、届出額と支給額が異なれば損金不算入となってしまいます。減額なら大丈夫だろうと思いきや、この場合もやはり損金不算入となってしまいます。このように、役員賞与では事情があってもイレギュラーな対応が認めらないという固定概念がありますが、役員賞与の損金算入について税務通信からこんな記事が伝えられています。
税務通信No.3617(2020年8月17日号)によると、中途退任した役員に、退任後に当初支給を予定していた賞与を満額支給した場合でも、職務執行の対価であれば、事前確定届出給与に該当すると伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、現行の役員給与税制は硬直的すぎるので、このような情報は非常にありがたいとコメントしています。
中途退任の場合、賞与の支給を諦めて退職金として支給しているケースもあったかもしれませんが、今後はこの記事を参考に役員賞与として処理できそうですね。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)