このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は2月5日、8日、10日のコメント「軽減税率導入後初申告で想定される否認リスク」「大阪吹田市マンションで固定資産税8,600万円過徴収」「居住用財産が生活拠点と認められないケース」の3件をご紹介します。
軽減税率導入後初申告で想定される否認リスク
令和元年10月1日に軽減税率制度が導入されて以降、初めての申告を迎えられていることと思います。制度が複雑な場合、意図せずミスが起きてしまうこともありますが、今回は意図的な適用誤りについてコメントされています。
税務通信3591によると、飲食料品の譲渡で軽減税率を適用すべき取引であるにもかかわらず、売り手が飲食料品以外の譲渡であるとして標準税率10%を適用することは、適正な税率判断とは認められないと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、税は実態で判断するのが常識で益税狙いは認められないとしつつも、訳の分からない軽減税率は廃止が妥当と、軽減税率制度の不備についても指摘されています。
軽減税率制度導入の初年度ということで、事務負担増加を実感している事業者や会計事務所の方は多くおられるのではないでしょうか。軽減税率制度が浸透するまで、まだしばらくかかりそうです。
大阪吹田市マンションで固定資産税8,600万円過徴収
固定資産税は市町村が計算して納税通知書を送付しているので、疑いもせず納付されていることと思います。ところが、実は固定資産税の計算誤りが頻発していると言うのです。
2020年2月5日付けの産経新聞によると、大阪府吹田市は、市内のマンション2,691戸の固定資産税と都市計画税約8,600万円を誤って過徴収したと伝えられています。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、全額返還といいつつ損害賠償の時効以前のものは賠償に含まれていないのではと疑念を露わにしつつ、固定資産税の徴収ミス続出に、仕組みを変えざるをえないとコメントされています。
固定資産税は毎年大体同じ税額で納付書が送られてくるので、違和感を感じずに納付されていると思いますが、そもそも初回から計算を誤っているケースもありえます。固定資産を取得した初年度だけでも固定資産税の計算が正しいか確かめることで、自己防衛すると良さそうです。
居住用財産が生活拠点と認められないケース
近頃はタワーマンションブームもあり、不動産価格が緩やかに上昇しています。マイホームの売買を検討している方も増えているかもしれません。マイホームを譲渡した場合、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例を検討されると思いますが、適用に際して注意すべき点があると言うのです。
2020年1月29日付けの税のしるべ電子版によると、居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例適用に関して、居住期間の水道やガスの使用量がほぼゼロだったため、生活の拠点として認めないとする裁決が下りたということです。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、国税は居住の実態について公共料金を重視するので、確定申告で公共料金もチェックしたほうが良いとコメントされています。
居住用財産の特別控除は3,000万円なので、適用を誤ったときの影響額も大きいです。ひと手間を惜しんで後悔することがないようにしたいものですね。
税務調査対策ノウハウを無料で公開中!
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋による税務調査対策に効果的なノウハウをまとめたPDFを無料で公開中!ご興味のある方は下記サイトよりダウンロードください。
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)