2019年11月15日、弥生株式会社より弥生 20 シリーズが発売となりました。
本記事では、去る2019年11月7日に東京・秋葉原のヤヨイヒロバにて開催された、弥生 20 シリーズの新製品発表会のレポートをお届けします。
※記事内のスライドはすべて弥生 20 シリーズ製品発表会資料からの引用です。
<本記事の目次>
弥生株式会社の現状
弥生シリーズが32年目を迎える弥生株式会社。代表取締役社長の岡本浩一郎氏がまずは弥生シリーズの現状を振り返りました。
*弥生株式会社は9月決算。
「登録ユーザー数」「弥生PAP会員数」「売上高」の状況はそれぞれ以下の通り、順調に推移し、弥生シリーズの好調さを示す数字となっています。
登録ユーザー数は190万以上に
弥生シリーズの登録ユーザーは190万を突破し、さらに順調に拡大中。デスクトップ、クラウドの両方で圧倒的シェアNo.1を実現し、登録ユーザー数を拡大しています。
弥生PAP会員数は9,800事業者を突破
弥生シリーズの販売パートナーでもある弥生PAP(やよいぱっぷ)の会員は9,800事業者を突破し、間もなく1万事業者突破の勢い。パートナーの「数」だけではなく、パートナーとの「リレーション」も意識し、数と質の両面から強化しているとのこと。
売上高も過去最高を記録
登録ユーザー数、弥生PAP会員数の増加とともに、売上高も過去最高を継続。法令改正の影響もあり、2019年度(FY19)の売上高は大幅に増加しています。
弥生とオリックスが共同設立、オンライン融資サービス「アルトア」
弥生と親会社であるオリックスが共同で設立し、新事業として取り組むオンライン融資サービス「アルトア」。オンライン融資という新たな形で融資を提供する同社ですが、2017年12月のサービス開始から2年弱で申し込みは1,500件を超え、順調に成長しています。
弥生 20 シリーズのアップデートポイントは?
続いて、弥生 20 シリーズについての発表が行われました。
弥生 20 シリーズは、「弥生会計20」「やよいの青色申告20」「弥生給与20」「やよいの給与計算20」「弥生販売20」「やよいの見積・納品・請求書20」「やよいの顧客管理20」の7製品が対象となっています。
アップデートに関しては、
- 法令改正対応
- 業務効率改善
の2側面からの発表が行われました。
軽減税率導入後アンケート、事業者によって負担感に大きな差
今回の新製品発表会では、10月から導入された軽減税率制度への改善対応にも多くの時間が割かれました。
軽減税率導入後の業務負担について、弥生独自でWebアンケートを実施しています。岡本代表から、負担が大きいと感じている事業者の実態、その内容などが報告されました。
軽減税率に関して、「これから負担が増える」という回答を含めると、約6割の事業者が「業務負担が増えた」と感じています。さらに、標準税率のみを扱う事業者と、軽減税率を扱う事業者に分けてアンケートを取った結果、軽減税率を扱う事業者の8割以上が負担を実感しているという結果になりました。
複数税率の取引が混在、“税率ごとの仕訳入力”の負担が最多
さらに弥生では、具体的に何を負担と感じているのか、また、扱う税率の違いによって負担に差はあるのかについても、アンケートを実施しています。
すべての業者で、「税率ごとの仕訳入力」が最も負担と感じていて、その中でも標準税率と軽減税率の両方を扱っている事業者の負担が重いことが分かります。
このアンケート結果を踏まえて、岡本代表は、仕訳入力のサポートの必要性を語りました。
キャッシュレス・ポイント還元仕訳を克服
消費税法改正で本格化したキャッシュレス・ポイント還元。消費への追い風となる一方で、会計面で仕訳方法が確立しておらず混乱が生じています。
方法1のようにキャッシュレス・ポイントを値引きとして記帳する場合、税率ごとに値引き額6円を按分しなくてはならず、かなり手間がかかります。
一方で、キャッシュレス・ポイントは国のキャッシュレス事業の補助金で賄われており、方法2のように不課税の雑収入で処理することが認められています。
キャッシュレス・ポイントの記帳方法は上記の2通りがありますが、記帳の手間を考慮すると、方法2が負担が少ないのではないかと岡本代表から説明がありました。
レシートの複雑化により、OCRによる読取精度が悪化
OCRによるレシート読取で仕訳の自動化が進められてきましたが、軽減税率導入でレシート記載方法が複雑化しています。これに伴いOCRでの読取精度が悪化していると、岡本代表は現状を分析します。
税率ごとに消費税が分かれているレシートもあれば、合算されているものもあります。すべてのものを精度高く読み取れる状況ではなく、段階的に対応できる範囲を広げてはいるものの、一定の時間がかかると、現状が報告されました。
仕訳辞書の活用で、税率選択を簡単に
では、ここまでの課題に対して、弥生 20 シリーズがどのように対応しているのでしょうか。早速、見ていきたいと思います。
まず、税率ごとの仕訳入力を簡単にするために、仕訳辞書など入力補助ツールが改善されています。
標準税率の販売だけの事業者も、来客用の飲料を購入すれば、軽減税率が適用されます。すべての事業者が迷わず帳簿入力できるように、税率が見やすくなっています。
所得税の電子申告優遇措置にも対応
2020年分の所得税確定申告以降、電子申告に対して控除額が優遇されることになります。これに合わせて、電子申告に対応するため、新たな機能が付加されました。
従来のバージョンも国税庁の電子申告ソフトにつなぐことはできましたが、新たに電子申告モジュールを自社開発することで、弥生会計ソフトだけで電子申告ができるようになりました。
業務効率化のアップデートポイント
2019年5月に成立した「デジタルファースト法」を踏まえて、弥生は業務プロセスの自動化・効率化をさらに進めています。
自動取込と自動仕訳ができるのはクラウドアプリだけというイメージを覆し、弥生会計ではデスクトップアプリでも対応しています。
スマート取引取り込みを引き続き強化
相次ぐ法令改正への対応もさることながら、加速度的に労働人口が減少しており、業務効率の改善を喫緊の課題として引き続き注力していく弥生 20 シリーズ。会計事務所と事業者間の自動仕訳の結果共有の範囲をどこまで広げられるのか、新たなポイントとして力を入れているとのことです。
また、金融機関との連携方式を、現行のスクレイピング方式からAPIでの連携に順次切り替えが進められており、自動取込先がメガバンクや地銀に拡大している点も注目ポイントとして挙げられました。
今後の法改正のヤマ場となるのが、2023年10月1日から導入されるインボイス制度。岡本代表は、インボイスを発行できない小規模事業者が課税事業者へ転向するケースが増えると予測し、システムでサポートをしていきたいと、今後の抱負を述べられました。
以上、弥生新製品発表会のレポートをお届けしました。