このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は11月8日、29日、12月1日のコメント「租税回避地の税制改正案議論」「海外親族控除に年齢制限」「SBGを包囲する税制改正案の実効性」の3件をご紹介します。
租税回避地の税制改正案議論
日本でも、平成29年度、平成30年度税制改正で、タックスヘイブン対策税制が厳しくなってきていますが、今後さらに課税が広まる流れになりそうです。
時事通信社の記事によると、OECDが多国籍企業による税逃れ防止策を議論しており、新たな国際課税案を2020年中に策定する最終報告書に盛り込む見通しとのことです。新たな課税案は、法人税率の最低水準を決めて、そこから租税回避地の低い税率を差し引いた残りを、本社のある国が法人税として課税できるというものです。
これに対してFacebookで、松嶋先生は「広く課税できそうな制度」とコメントされており、今後の日本の法制化を見守るスタンスです。
世界的な税制改正で、タックスヘイブンから恩恵を受けられなくなる日が来ることもあるかもしれません。
海外親族控除に年齢制限
引き続き、こちらも税逃れ防止策の話題です。
東京新聞の記事によると、海外に住む親族の扶養控除の適用条件を厳しくするため、2020年度の与党税制改正大綱で、控除対象者に年齢制限を設ける案が盛り込まれるそうです。
これに対してFacebookで、松嶋先生は、「収入と年齢に関係性はない」と、制度に論理性がないと指摘されています。
年齢制限しても、相当の収入がある人すべてを扶養控除の対象から外せるようにはならなさそうです。より実効性のある改正案になるようさらなる議論が望まれます。
ソフトバンクグループを包囲する税制改正案の実効性
ソフトバンクグループの2018年3月期の国内法人税がゼロだったことが議論を呼びました。これを受けて、子会社を使った節税スキームの防止策が、2020年度の税制改正大綱に盛り込まれるようです。
日本経済新聞社の記事によると、与党の税制調査会は2020年度の税制改正大綱に法人税や所得税、消費税の節税策を封じるための対策を盛り込む方針とのことです。防止策の具体的な内容としては、過去10年以内に買収した子会社が株式簿価の1割を超える配当をした場合に、税務上は株式簿価をその分だけ引き下げることを義務付けるというものです。
これに対してFacebookで、松嶋先生は包括否認規定を設けない改正では法逃れを見逃すことになる、「馬鹿げた税制改正」と辛口のコメントをされています。
改正前から企業と国税当局のイタチごっこが懸念される改正案に対して、国会で十分な議論がされることを期待します。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)