このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は10月17日、24日、30日のコメント「大阪高裁判決、給与口座差し押さえは違法」「人気お笑い芸人無申告は許されず」「外れ馬券代を経費認定した東京地裁の判断」の3件をご紹介します。
大阪高裁判決「給与口座差し押さえは違法」
滞納者の生活保護の観点から、国税の差押えと言えども、給与の一部は差押え禁止となっています。ところが、このような法の趣旨を無視するかのように、給与が振り込まれた口座が差し押さえられているというのです。
京都新聞の記事によると、給与が振り込まれた2日後に口座預金を差し押さえたのは違法だとして返還を求めた訴訟で、大阪高裁は国側に全額の返還を命じたそうです。
- 生活困窮で所得税滞納、口座の給与差し押さえは「違法」 大阪高裁、国税に全額返還判決(京都新聞 2019年10月11日付)
これに対してFacebookで、松嶋先生は、「給与は無理でも給与が入った口座は差し押さえられるっていう国税の解釈はすごい理屈」と呆れつつ、大阪高裁の判決を評価しています。
生活に困窮して追い詰められた状態でも諦めずに訴訟に踏み切ったおかげで、妥当な判決を勝ち取ることができました。今後同様の事案が起きないための、良い前例になることを願います。
人気お笑い芸人無申告は許されず
人気お笑い芸人としての知名度の高さと、1億2千万円というという所得隠し及び申告漏れの金額の多さも相まって、連日のように報道されています。
FNNプライムオンラインがリリースした記事によると、お笑いコンビ「チュートリアル」の徳井義実さんに、東京国税局から7年間で約1億2000万円の所得隠しと申告漏れが指摘されたそうです。また同取材の中で、国民の義務を果たさず納税を軽視した事案と、厳しく批判しています。
この記事に対して松嶋先生は、国税が7期遡及したのは相当悪質と判断したためではないかと推察されており、「無申告は許されない」と怒りを抑えられない様子です。
なお、吉本興業ホールディングスのWebサイトで、今回の税務申告漏れについて詳細が説明されています。
- チュートリアル徳井義実の税務申告漏れに関するご報告(吉本興業 2019年10月26日付)
税務署から2度も無申告を指摘されていたにも関わらず、今回、国税局の税務調査でまた同じ内容を指摘されたということで、意識の低さに呆れるばかりです。
外れ馬券代を経費認定した東京地裁の判断
競馬で生計を立てている方で、せっかく当てても外れ馬券代が経費にならないのは仕方がない。30億円も馬券買ってないからと今まで諦めていた方にとっては、もしかしたら朗報となるかもしれません。
共同通信社の記事によると、年間数千万円の外れ馬券の購入代金を経費に算入するよう求めた訴訟で、東京地裁は「必要経費と認めるのが相当」として、税務署の決定を取り消したということです。
この記事に対して松嶋先生は、「まともな判決は嬉しい」、年間数千万円購入していれば継続性が認められるはずだとコメントしています。
と言っても、競馬愛好家の方たちが購入した馬券がすべて経費算入できるようになるわけではないので、ご注意ください。
税務調査対策ノウハウを無料で公開中!
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋による税務調査対策に効果的なノウハウをまとめたPDFを無料で公開中!ご興味のある方は下記サイトよりダウンロードください。
元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)