このコーナーでは、元国税調査官・税法研究者・税理士である松嶋洋氏のFacebookでのコメントをご紹介していきます。
今回は8月24日、27日、9月2日のコメント「プロ野球親会社からの支援金は何費?」「相続対策で高裁が税理士法人に3億円賠償命令」「相続税対策の王道スキーム否認による影響は」の3件をご紹介します。
プロ野球親会社からの支援金は何費?
プロ野球球団親会社からの支援金取扱いに関して、特例があることはご存知でしたか。
エキサイトニュースに松嶋先生が寄稿した記事によると、球団を保有する親会社が球団に財務的な支援をした場合に、特例を認める通達があるのだそうです。その内容は、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分の金額は広告宣伝費として全額経費になること、また、野球事業から生じた一定の赤字金額を填補する支出も同様の取扱いになるというものです。この通達に対して、特例を認めるとしても、税の取扱いは通達ではなく法律で決めるべきだと主張されています。
さらにFacebookで、松嶋先生は『この取り扱いは税の信念を捻じ曲げいていると言わざるを得ない』、『通達課税の悪癖』と厳しく批判しています。
通達と税法は同じものとして取り扱ってしまいがちですが、租税法律主義の原則に立ち返る契機になるコメントです。
相続対策で高裁が税理士法人に3億円賠償命令
万が一の備えとして税理士職業賠償責任保険に加入している税理士の方は多いでしょう。特に、専門性が求められる資産税の案件は損害賠償のリスクが頭をよぎり、保険に加入していても自身では受任せず、資産税専門の税理士に取り次ぐ税理士の方もおられるかもしれません。
「税のしるべ(2019年8月26日号)」の記事によると、税理士法人がリスクを適切に説明せず節税策を提案し実行したことで、顧問先に多額の税負担が生じ、顧問先から税理士法人に対して約3億2,900万円の損害賠償を求めた訴訟が提起されていたそうです。請求額の全額支払いを命じた地裁判決を高裁が支持し、税理士法人の地裁判決取り消し請求を棄却したということです。
この記事に対し、松嶋先生は『税理士責任の重さを痛感する』とコメントした一方で、『会計業務は自動化され素人でもできる』という考えたがあることに警鐘を鳴らしています。
資産税の怖さを思い知らされる判決になりました。
相続税対策の王道スキーム否認による影響は
生前贈与や賃貸不動産購入などは、相続税の節税対策としてよく利用されている手法ですが、賃貸不動産を活用した節税対策を巡り訴訟が提起されたようです。
「税務通信3570号」の記事によると、借入金を利用して不動産を購入する節税策を巡り訴訟となり、納税者が敗訴したそうです。当初課税価格が6億円超あったが相続税が課税されないことになったこと、及び、近い将来相続が発生することを予想して相続税の負担を減らす目的で実行したことなどが理由となりました。
この記事に対し、松嶋先生は『一番の問題点は(銀行の)稟議書の記述が問題視された点』として、このスキームを利用する際の注意点を指摘されています。
すでに節税策として顧問先に指導済みという方は要注意です。
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元国税調査官・税法研究者 松嶋洋とは?
元国税調査官・税法研究者・税理士
松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
(著者:大津留ぐみ / 大津留ぐみの記事一覧)