申告した税金の計算が間違っていたため、税金を過大に納税していた場合、 “更正の請求” という手続きを経て、多く支払った税金の還付を受けることができます。
この更正の請求ですが、実際のところはその要件が細かく決められており、
①税金の計算誤りがある場合
②法令の適用誤りがある場合
に限り、その税金の還付を受けることができます。
少し専門的な話になりますが、これらの要件が実務で問題になるケースとしては、選択できる計算方法が二つ以上ある場合が挙げられます。
税務においては、選択できる計算方法が二つ以上設けられており、そのうち納税者が任意に選択した方法で税金を計算してもいい、という取扱いがなされる規定があります。
この場合、選択がいい加減だと当初の確定申告で選択したAという方法が実は有利ではなく、選択可能なBという計算方法でやっていればもっと税金が少なくなった、ということが生じることがあります。
しかし、このようなケースでは更正の請求は認められません。
法律上、Aで計算することもBで計算することも認められていますので、Aを選択したことについて税金の計算誤りもなく、法令の適用誤りもないという結論になるからです。
このルールは税理士にとっては常識的ですので、仮に上記と同様のケースがあれば、納税者の方には更正の請求ができません、と説明しています。
しかし、聞くところによると、国税はこのようなケースであっても、場合によっては更正の請求を認めてくれることがあるそうです。
法律的には認められないのですが、納税者にとって還付できないのは酷ですから、「今回だけですが...」 「公開して欲しくないのですが...」などと前置きした上で本来は返せない税金も還付する、といった実務が多く行われているようです。
以前聞いた話ですが、譲渡所得の計算上控除できる取得費について、当初の確定申告で選択しなかった、市街地価格指数による計算を更正の請求で認めてくれた事例があるようです。
取得費がわからない場合、譲渡収入の5%か、市街地価格指数などを基に合理的に計算するか、いずれかを選択することになりますが、市街地価格指数による計算は法令上は明確にされていませんので、多少リスクがあると説明されています。
このため、一般的には譲渡収入の5%を取得費として申告することがほとんどです。
この場合のリスクとして、“譲渡収入の5%を取得費として申告してしまうと、後日市街地価格指数などで計算したいと思っても更正の請求はできず、泣き寝入りするより他にはありません” と解説されています。
しかし、実務ではこのような裏技対応もなされる可能性がありますので、法律の要件に捉われることなく、逐一国税に確認を取った方がいいでしょう。
このような更正の請求が認められれば、納税者にとって極めて有利な状況となりますが、その反面、法律に則っていない実務が幅を利かすのはやはり残念にも思います。
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著者
元国税調査官・税理士 松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百二十四回目のメルマガ、テーマは「押さえておきたい更正の請求とゴリ押しの関係」です。
引用元:押さえておきたい更正の請求とゴリ押しの関係 | 税理士法人 東京税経センター