OB税理士と話すと、必ず話題に上ることの一つに、現職時代に裏金を作っていたことが挙げられます。
税務署の上級機関である国税局から、税務署の職員の福利厚生として、芝居などのチケットを交付されることがあります。
そのチケットについて、以前勤めていた税理士事務所のOB税理士が話していたことですが、職員に配ることなく、金券ショップで現金化して税務署の予算に充てるといったことがかなり行われていたようです。
税務署の会計業務を行ったことがないため確たることは言えませんが、現職時代、上級官庁である国税局から割り当てられる税務署の予算が少ないため、税務署の会計担当者は自腹を切らされることがあると聞いたことがあります。
自腹を切ったところで焼け石に水でしょうから、このような裏金作りも国税内部では必要悪として行われていたと思われます。
流石に現職時代にはこのような話を税務署の外部ですることはできませんが、不正経理を発見して是正させるべき組織の内部でこのような矛盾する実務が行われていたという意味でギャグになると考えているOB税理士も多いのでしょう。
このような話が笑い話としてなされることが多くあります。
現状もこのような裏金作りがなされているのか分かりませんが、一つ言えることは、税務署の正義感と矛盾することを行っていたとしても、その矛盾に対して国税組織は罪悪感を持たないということが挙げられます。
実際のところ、私の現職時代、税務大学校という組織で行われていた研修については、試験問題を前バラシにしておきながら、それを情報公開の対象となる研修の日誌に記載するな!
このように、強く教授から指導されていました。
研修の日誌に記載しないよう指導する、ということは、試験問題を前バラシしているという事実関係を隠ぺいしていることになります。
このような隠ぺい行為は、税務職員が厳しく指導する重加算税の要件と同様であり、隠ぺいする対象が課税対象となる事実関係か否かの違いしかありません。
しかし、このような考え方は組織としては非常識だったのでしょう、研修のアンケートに「前バラシの試験でいい点とっても嬉しくない」このように記載したところ、次回の異動では、地方の税務署に見事に左遷されることになりました(笑)。
なお、試験問題を前バラシしている研修は、国税職員の税理士試験の免除要件になっているものですから、実質的にOB税理士は前バラシの税理士試験を受けて合格証書を取得していることになります。
一般の税理士試験は前バラシではありませんから、極めて不公平です。
このようなことを申し上げると、非常識な税理士に該当するとして、税理士の品位がなく税理士免許はく奪などといった指導が国税からなされるかもしれません(笑)。
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著者
元国税調査官・税理士 松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百二十回目のメルマガ、テーマは「「裏金を作っていた」という話題」です。
引用元:「裏金を作っていた」という話題 | 税理士法人 東京税経センター