印紙税の「請負」と弁護士:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

税理士もよく分かっていない印紙税について、近年は多額の課税がなされることもあってか、税理士ではなく、法律全般の専門家である弁護士や行政書士が印紙税のセミナーを実施していることがよくあります。

印紙税は税でも税理士業務の対象にならないとされていることもあり、 印紙税は税理士ではなく弁護士に聞くべきといった宣伝も見られます。

弁護士に印紙税について尋ねる場合、押さえておく必要があるのは、弁護士が得意とする民法の用語と印紙税の用語はイコールではないということです。

具体例を申しますと、印紙税が課税される請負契約書の「請負」は、民法にいう「請負」とは一致しないとされています。

この違いを分かっている弁護士であれば問題ないですが、多くの弁護士はこの点理解していないと考えられます。

というのも、イコールではない、というのは印紙税法を読んでも分からず、国税庁のホームページにこっそり書かれてあるからです。

国税庁のホームページを読むと、「民法上、例えば、委任契約に近いといわれる混合契約でっても、印紙税法上は請負契約となるものも生ずる」と書かれてあり、民法と印紙税はイコールではないことが分かります。

実際のところ、印紙税の請負とは、成果物の有無で判断すると国税内部で指導されています。
税法も知らない国税職員は、民法などについて全く知りませんから、民法の請負になるかどうかに関係なく、成果物の有無だけで判断して課税しますので注意してください。

ここでいう成果物とは、仕事の成果として納品すべきもの サービスの完了時点が明確であるもの をいいます。

一般的に、税理士の顧問契約は請負契約になりませんが、仮に決算書などを作成することが明記されていれば、仕事の成果として納品すべきもの(決算書)があるということになり、印紙税の世界では請負契約として課税されることになります。

ここで問題になるのは、成果物と一言で言っても複雑ですので、実際のところはその判断においてかなり多くの経験が必要になるということです。

成果物に該当するかどうか、印紙税を専門にしている国税職員も判断に迷うことがあり、多数決で決める場合もあります。

法律だけでは印紙税は分かりませんし、かつ豊富な経験も必要になりますから、法律は詳しいものの、泥臭い国税の実態は知りようがない弁護士が正確に印紙税の判断ができるかと言えば、多少疑問も残るという結論になります。

こういうわけで、印紙税については、多くの税理士はもちろん、弁護士も頼りにはならないと個人的には考えています。

このため、確実を期すのであれば、税務署で印紙税を担当したことがあるOB税理士に聞いた方がいいでしょう。

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著者

元国税調査官・税理士・松嶋洋


元国税調査官・税理士 松嶋 洋

平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。

現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。

<参考サイト>

<著書>

※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百十九回目のメルマガ、テーマは「印紙税の「請負」と弁護士」です。
引用元:印紙税の「請負」と弁護士 | 税理士法人 東京税経センター

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