従来、実際に税務調査で問題点を指摘される前までに自主的に修正申告を行えば、「ペナルティである加算税がかからない」という取扱いでしたが、現在、税務調査の実施の連絡があった後の自主修正については、加算税は免除されません。
特に注意しなければならないのは、会社で確認する資料などについても連絡しなければならないとされる、通常の税務調査の予告(事前通知)とは異なり、
1 調査を実施する旨
2 調査対象とする税目
3 調査対象期間
の3つを通知すれば自主修正の制限がスタートする、という点です。
事前通知は、上記の3点に加えて
調査日時
調査をする場所
調査対象とする資料の範囲
なども連絡する必要があります。
ご覧いただくとわかる通り、簡単な事項だけ通知すれば自主修正の制限がスタートするわけで、国税は事前通知と異なる連絡として調査通知などと呼んでいます。
調査日時なども連絡するとなると、調査先との調整が必要になって時間がかかります。
敢えて簡単な通知だけで自主修正を制限するために、敢えて事前通知せず、調査通知だけすればいいとされているのです。
結果として、国税から電話があれば、それだけで自主修正は認められず、加算税は免除されないと覚悟しておく必要があります。
実際のところ、調査法人との日程調整を依頼すると同時に、日程調整に先立って、まず調査通知をさせてくださいと調査官は言っています。
ここで問題にすべきは、日程調整もできていないのに、果たして調査をする旨や調査対象税目について聞く必要があるか、ということです。
税務調査の日程調整がどうしてもうまくいかない場合、国税は調査を延期することがよくあります。
毎年国税組織では異動がありますし、都合がつかず税理士の調査実施希望日が国税の繁忙期になるのであれば、調査する実益と対比させて翌年度に回す、といった対応がなされることもあるからです。
このため、調査する予定と連絡しておきながら、実際に調査しないこともありますので、少なくとも調査日時は決めておく必要があると考えます。
実際のところ、クライアントとの日程調整を依頼しておきながら、私に調査通知をしようとした調査官に、日程調整が終わってから調査通知するべきと主張したところ、調査官はその主張を認めてくれました。
自主修正の制限は遅い方がいいですから、このような理由で調査通知を延期することができますので、その旨しっかりと国税に主張しましょう。
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著者
元国税調査官・税理士 松嶋 洋
平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。
現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。
著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。
<参考サイト>
<著書>
※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百十六回目のメルマガ、テーマは「調査通知は延期できる」です。
引用元:調査通知は延期できる | 税理士法人 東京税経センター