「借地権の取引慣行があると認められる地域」の意義:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

相続税の申告の際、悩むことの一つに、「借地権の取引慣行があると認められる地域」という用語の意義があります。

相続税については、土地を借りている場合、借地権という土地を使用する権利を相続財産として申告しなければならない場合があります。

具体的には、借地権という財産があると認められる場合には相続税の申告が必要になるとされており、その判断として、土地を借りている地域において、借地権を取引する慣行があるかどうか を判断することになっています。

取引する慣行があれば、借地権は財産と認められることから、原則として借地権を相続財産として申告しなければなりません。

なお、借地権とは一般的に、土地を借りる時の権利金を意味すると言われます。

地域によっては、土地を貸す際、借手がつかないため権利金を取れないことが多くあります。

このような場合には、そもそも借地権という財産があるとは言えないため、「相続税の申告に含める必要はない」このような考え方から、取引慣行のない地域における借地権は評価しない、という取扱いが設けられています。

ここで問題になるのは、何をもって取引慣行のない地域と言えるのか、明確な指針がないことです。

相続税の通達や法律を見ても、借地権の取引慣行のない地域はどこになるのか、明確に書かれていません。

このため、以前受講したセミナーでは、その地域に住む方の感覚として、土地を貸すのに権利金を取らないことが多い地域であれば、借地権の取引慣行あると認められる地域として借地権を相続税において申告せずとも許されると考える税理士も多いようです。

しかしながら、この「借地権の取引慣行があると認められる地域」については、個人の感覚といったあやふやな基準で判断するものではなく、明確な基準が実は存在しているのです。

それは、路線価図・評価倍率表です。

毎年国税から公表される路線価図・評価倍率表をご覧いただくと、「借地権割合」という割合が記載されています。

相続税で申告すべき借地権の評価額は、土地の価額に、この借地権割合を乗じて計算することになっています。

例えば、相続税の評価額が100で借地権割合が30%の土地を借りたのであれば、原則として30の借地権を申告することになります。

借地権の取引慣行がない地域については、借地権を評価しないとされていますので、借地権割合が記載されていない地域がこの借地権の取引慣行がない地域に当たります。

言い換えれば、個人の感覚として土地を貸す際権利金を取れない地域であったとしても、路線価図・評価倍率表に借地権割合が記載されている以上は、借地権として評価し、相続税で借地権の申告をしなければなりません。

この点、言われてみればなるほど、といったところですが、どういう訳かこの常識的な取扱いについて、通達や法律に明記がありませんし、税理士のブログなどでもあまり取り上げられていません。

国税の実務対応がどうなっているのかイマイチ分かりませんが、少なくとも税理士の感覚で決まるようなものではありませんので、注意する必要があります。

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著者

元国税調査官・税理士・松嶋洋


元国税調査官・税理士 松嶋 洋

平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。

現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。

<参考サイト>

<著書>

※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百十二回目のメルマガ、テーマは「「借地権の取引慣行があると認められる地域」の意義」です。
引用元: 「借地権の取引慣行があると認められる地域」の意義| 税理士法人 東京税経センター

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