タックスヘイブン税制に要注意:元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る!税務署の実態と税務調査対策ノウハウ

元国税調査官・税理士 松嶋洋が語る_税務署の実態と税務対策ノウハウ

タックスヘイブン税制という制度をご存知でしょうか。

制度の解説の前に、タックスヘイブンとは、ケイマン諸島、香港、シンガポールetcといった、異常に税率が低かったり、税制度が緩すぎたりする国を言います。

こういう国にお金持ちが移住して、税金を安く押さえているという話を聞いたことがある方も多いと思います。

さて、タックスヘイブン税制とは、

  1. タックスヘイブンに子会社を持っており
  2. 一定の要件を満たす場合

そのタックスヘイブン子会社に留保した利益について、それは日本の親会社の利益であるとして、日本で課税を行うという制度をいいます。

よくある税逃れですが、

  1. タックスヘイブンに子会社を作る
  2. 税金のやすいタックスヘイブンのの子会社に、利益を貯めこむ
  3. ため込むことで、日本の課税を逃れる

こういう租税回避を防止するために、この制度は設けられています。

内容は複雑なので詳細は割愛しますが、このタックスヘイブン税制の適用上、適用除外基準というものがあります。

これは、タックスヘイブンに子会社を作ったとしても、その子会社に実態があるなど、税逃れではなく、合理的な理由に基づいて作った子会社については日本で課税するべきではないという考え方が設けられています。

この適用除外基準に該当すれば、タックスヘイブンに作ったとはいえ、合理的な理由があって作った子会社なので、タックスヘイブン税制の適用はありません。

従来とは異なり、この適用除外基準に関しては、現在推定規定が存在しています。

具体的には、国税が指定する期日内に、適用除外基準に該当する旨の資料を提示しなければ、適用除外基準に該当しないと推定するという規定です。

専門的になりますが、この規定の意味するところは、仮に期日内に資料を提示できなければ、実際のところは適用除外基準を満たしていたとしても、タックスヘイブン税制の適用があるとして処分がなされ、多額の税金を取られることになるのです。

とりわけ、大きな意味を持つのは、適用除外基準に該当するかどうかの立証責任が、納税者にあるとされたことです。

従来、適用除外基準に該当しないことについては、国税が証明する必要があるとされており、この立証を国税ができなければ、裁判で勝つことはできないとされていました。このため、かなり納税者の勝率は高かったのです。

しかし、今後はこの推定規定が設けられますので、納税者が証明しなければ、税務調査で勝つことができません。このため、早いうちから資料を用意しておく必要があると考えられます。

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著者

元国税調査官・税理士・松嶋洋


元国税調査官・税理士 松嶋 洋

平成14年東京大学卒業後、国民生活金融公庫(現日本政策金融公庫)、東京国税局、企業税制研究所(現日本税制研究所)を経て、平成23年9月に独立。

現在は通常の顧問業務の他、税務調査対策等のコンサルティング並びにセミナー及び執筆も主な業務として活動。とりわけ、平成10年以後の法人税制抜本改革を担当した元主税局課長補佐に師事した法令解釈をフル回転させるとともに、当局の経験を活かして予測される実務対応まで踏み込んで解説した、税制改正解説テキスト「超速」シリーズは毎年数百名の税理士が購入し、非常に高い支持を得ている。

著書に『最新リース税制』(共著)、『国際的二重課税排除の制度と実務』(共著)、『税務署の裏側』『社長、その領収書は経費で落とせます!』などがあり、現在納税通信において「税務調査の真実と調査官の本音」という200回を超えるコラムを連載中。

<参考サイト>

<著書>

※このコーナーでは元国税調査官・税理士 松嶋洋が税理士法人東京税経センターのメルマガに掲載したコンテンツを編集・再掲したものをお届けしています。今回は、第二百八回目のメルマガ、テーマは「タックスヘイブン税制に要注意」です。
引用元: タックスヘイブン税制に要注意| 税理士法人 東京税経センター

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