平成30年度(2018年度/第68回)税理士試験の結果はこちら↓
本日、平成29年度(2017年度/第67回)税理士試験の結果が発表されました。(写真は国税庁)
合格された皆様、おめでとうございます。
また、惜しくも合格とはならなかった皆様、来年は良い結果をつかめますよう祈念しております。
さて、今年の税理士試験の結果に関する考察をお届けします。
今年は、
- 合格者数が996名増加
- 財務諸表論の合格率が29.6%と高水準(例年の倍近く)
と言った点が注目ポイントです。
受験者・合格者数と合格率
合格者は6,634名。昨年から996名の増加!
本年の税理士試験の受験者・合格者数と合格率は以下のようになっています。
- 受験者数:32,974名(延べ45,462名)
- 合格者合計:6,634名(官報合格者数:795名、一部科目合格者数:5,839名)
- 合格率:20.1%
本年の合格者(一部科目合格者含む)は6,634名であり、昨年の5,638名から996名の大幅増となっています。また、合格率は昨年の15.8%から20.1%へと4.3%上回る結果となりました。
科目合格も含む合格者数は、平成24年から10,068名→8,348名→6,909名→6,902名→5,638名と減少傾向にあったものの、今年の合格者数は6,634名と増加する結果となりました。
【平成29年度(第67回)税理士試験の受験者数・合格者数】
官報合格者の数は795名と昨年の756名から39名ほど増加しており、2年連続の減少であったのが増加へと転じています。
【平成29年度(第67回)税理士試験の官報合格者数】
男女別の合格者数
女性の合格者比率は28.2%
合格者の性別は以下のとおりです。合格者に女性が占める割合は28.2%となっており、昨年より上昇、全体の約4分の1が女性となっています。
税理士試験の合格者の減少に伴い、女性の合格者の総数は少なくはなってきていますが、女性比率はこの4~5年では27%前後を維持しています。
- 合格者合計:6,634名(男性:4,762名、女性:1,872名)…女性比率28.2%
- 官報合格者:795名(男性:584名、女性:211名)..女性比率26.5%
- 一部科目合格者:5,839名(男性:4,178名、女性:1,661名)..女性比率28.4%
【平成29年度(第67回)税理士試験合格者に占める女性人数・比率】
昨今の税理士業界では、人材難から少しでも人材を有効活用しようという動きも活発になっており、特に東京などの都市圏の会計事務所では、結婚・出産後も女性が復帰できる制度を整えたり、リモートワークや時短勤務制度を導入したりするなどの動きも見られます。
会計事務所業界の仕事は手に職がつき、時短・リモート勤務なども実現しやすい職種でもありますので、業界としてより女性に魅力をアピールして受験者数を増やすことも重要かもしれません。
年齢別の合格者数
30歳以下の官報合格者はわずか182名!
年齢別の合格者数は以下のとおりです。例年通り若い年齢ほど合格率が高くなっています。
一方で、30歳以下の官報合格者はわずか182名と若手税理士の少なさが読み取れます。
この182名と言う数字は、47都道府県で平均すると4名弱という人数になります。若手税理士の価値の高さがわかる数字である一方、業界の活性化のためには若手税理士を増やすことも必要であると考えられ、この点も業界の課題のひとつと言えるかもしれません。
【平成29年度(第67回)税理士試験の年齢別合格者数・合格率】
科目別の受験者数・合格者数・合格率
合格率最高は財務諸表論の29.6%、最低は国税徴収法の11.6%
科目別の受験者数・合格者数・合格率は以下のとおりです。
合格者・合格率ともに財務諸表論の数字が際立っており、財務諸表論の合格者数は3,081名、合格率は29.6%と例年の倍近い数字となっており、この数字が税理士試験全体の合格者数や合格率を大きく引き上げる要因となっています。
逆に、合格者が最も少なかったのは事業税の59名、合格率が最低だったのは国税徴収法の11.6%でした。
【平成29年度(第67回)税理士試験の科目別受験者・合格者数・合格率】
※合格者数・受験者数は複数科目受験者・合格者を含む延べ人数。
※クリックするとグラフが拡大します。
いかがでしたでしょうか。
今年の税理士試験の合格者数は、約1,000名の増加という結果になりましたが、その内訳としては、財務諸表論の合格率の高さが底上げしている側面もあります。
税理士がAI(人工知能)によって代替される可能性が高い職業に挙げられるなど、税理士業界にとって明るくない話題の多い昨今、その影響もあってか受験者数は引き続き減少傾向にあります。
税理士を目指す方々にとっては少しでも早く合格できることは良いことであり、また、受験者数の減少による採用難に悩む会計事務所業界にとっても、少しでも合格者が増えることは良い傾向ではあります。
合格者数の増加は業界として明るい話題ですが、一方で、長期的な視点では、税理士志望者の増加という根本の課題の改善は引き続き大きなテーマと言えるでしょう。