会計事務所名鑑をご覧の皆様、こんにちは freee株式会社の高木です。
独立を目指す人や税務業務に従事している人など、公認会計士登録した後、税理士登録を希望する会計士の方って実は多いのではないでしょうか。
ただ、税理士登録って実際どうやってやるの、どれくらいの期間やお金がかかるの、何の書類が必要なの、という事実を知らない人が多いのも現実。
私も実際に登録作業を行うまで、全く実態を知りませんでした。
そこで、2月に税理士登録したばかりの私が、公認会計士が税理士登録するまでのリアルな体験記をご紹介したいと思います。
登録にはかなり苦労したのですが(笑)、そういった苦労も含めて赤裸々に記していきます。
※本記事は公認会計士ナビに掲載された記事を一部改変して掲載してあります。元記事はこちらをご覧ください。
freee株式会社 プロダクトマネージャー公認会計士
1988年生まれ。京都市出身。2011年公認会計士試験合格。新日本有限責任監査法人にて、IT業・不動産業等の会計監査・内部統制監査等の業務に従事。2014年よりfreee株式会社に参画。freeeではユーザーサポート・導入支援・マーケティングを経験し、現在はプロダクトマネジメント業務に従事している。
そもそも、なぜ税理士登録しようと思ったのか
freee社員として活動する分には、税理士資格は必要ありません。
freeeの仕事は忙しいですがエキサイティングで楽しいですし、会社を辞めて税理士業務をやろうとはあまり思っていませんでした。
私はfreeeに入社して4年目になり、会社の中では古株社員になるのですが、その中で税理士の方と関わる機会が非常に多くありました。監査法人時代は会計事務所の業務について、あまりはっきりとしたイメージを持てていなかったのですが、多くの税理士さんとお話しする経験を通じて、実はfreeeを元にしたスモールビジネス向けの会計事務所の業務ってめちゃくちゃ面白いんじゃないか、と思うようになったのです。
しかしfreeeの使い方や細かい仕様はわかりますが、自分自身が税理士としてfreeeを用いたサービスを実際に提供した経験はありません。
実務経験がない中では薄い話しか出来ませんし、自分自身で税理士業務を行ってみることで、今後のプロダクト開発にも生かすことが出来るのではないか、また今後のキャリアにも生きてくるのではないかと考えました。
幸いにもfreeeは副業がOKな会社なので、副業としてfreeeを前提とした会計事務所を設立しようと決断しました。
副業税理士として、freeeを前提とした新しい税理士業務を模索していきたいという想いのもと、税理士登録をすることになったのです。
登録に必要な期間や費用はまずは税理士登録の全体像をご紹介
税理士登録を行うための手続きには、必要書類の用意や面談や研修の受講など細かいステップがありますが、まずは全体像をご紹介します。
「税理士 登録・開業の手引」を参考に
税理士登録を行うに当たって日本税理士会連合会から「税理士 登録・開業の手引」が公開されていますので、公式なマニュアルとしてはこちらを参考にしましょう。
税理士登録の3つの区分
税理士には「社員税理士」「所属税理士」「開業税理士」の3つの区分があります。
ざっくりと解説しますと、
社員税理士…税理士法人の社員である税理士
所属税理士…税理士事務所や税理士法人に勤務する税理士
開業税理士…独立し自らの名において税理士業務を行う税理士
という区分です。
公認会計士の方が初めて税理士登録を行う場合は、おそらく「開業税理士」での登録、もしくは、税理士法人に勤務されていて「所属税理士」として登録される方が多いのではないかと思います。
税理士登録に必要な金額や維持費は
税理士登録に必要な費用
税理士登録に必要な金額は、合計で約18万円です。
内訳は下記になります。
- 登録免許税6万円
- 登録手数料5万円
- 東京税理士会入会金4万円
- 東京税理士会会館建設費2万円
- 登録時研修受講料5千円
- その他書類申請に関する手数料・郵送費用等5千円
税理士の資格維持費用
また、税理士資格を維持するための費用は、合計で12万5千円年間となります。
私の場合、「東京税理士会」「税理士会品川支部」に登録しましたので下記の金額となります。前述の入会金も含め、所属する税理士会によって金額は少し違うようです。
- 東京税理士会への年会費7万5千円
- 税理士会品川支部への年会費5万円
税理士登録のスケジュール
税理士登録の期間に関しては、準備から登録完了までに約3ヶ月程度が必要です。
登録申請は、月末締切→翌月審査・面接→翌々月下旬に登録完了という流れになっています。
注意点としては、書類申請が月末締切のため、それに1日でも遅れてしまうと、次の月末締切になってしまう点です。例えば、4月中に開業したい場合は、2月末締切分の申請に間に合わせて、3月に面接を行って、4月下旬に登録完了という流れになります。
こういった点に注意しながらスケジュールを考えるのが良いでしょう。
ここが一番大変提出書類の収集と作成
税理士登録には税理士会から指定された書類の提出が必要です。私の場合は18の書類が必要だったのですが、ここが最も大変でした。
書類集めは2~3週間を想定しておこう
私の場合、税理士登録をしようと思い始めたのが10月下旬でしたが、そのあたりからぼちぼちと書類を集め始めていると、結局、仕事がバタバタで11月の締切に間に合いませんでした。
そこで、12月末の締切に間に合わせるべく、12月上旬から本格的に着したところ、無事に12月中旬に提出が完了しました。
書類集めは頑張れば最短だと1週間くらいで終えることも可能だと思いますが、役所など様々なところから取り寄せる必要がありますので、普通に集めると2~3週間くらいはかかると考えておいたほうが良いと思います。
また、申請書類はダウンロードできるものもありますが、基本的には税理士会に直接貰いに行くほうが漏れもなく安全だと思います。窓口で相談すれば、書類一式と諸注意等を教えてくれ、下記の冊子を貰うことができます。
税理士登録に必要な書類一覧
税理士登録にはたくさんの書類が必要でしたが、一式でこのくらいでした。写真ではちょっとわかりにくいかもしれませんが、どっさり..
番号 | 書類名 | 内容 | 入手先 |
1 | 税理士登録申請書 | 登録申請情報を記載する書類。合計5通必要 | 税理士会から直接もらうか、税理士会のホームページから |
2 | 登録免許税領収証書 | 6万円。手引に記載例があるので納付書にはそれ通りに記載 | 銀行・郵便局。 窓口のみでの対応なので注意 |
3 | 写真 | 証明写真でOK。背景は無地で、上着とネクタイ着用必須。
後の税理士証票の写真になるので変な顔にならないようにしましょう |
証明写真 |
4 | 日本税理士連合会差出のはがき | 面接の日程を通知する返信用はがき | 申請書類受取時に一緒に入っています |
5 | 履歴書 | 登録までの経歴を記載 | 税理士会から直接もらうか、税理士会のホームページから |
6 | 戸籍妙本 | 発行日から3ヶ月以内 | 本籍地の役所。郵送請求OK |
7 | (世帯全員の)住民票の写し | 発行日から3ヶ月以内
マイナンバーが入ってないものにしましょう |
役所の窓口・マイナンバーカード持っている場合はコンビニ等 |
8 | 税理士となる資格を証する書面 | 公認会計士の場合は、「登録証明書」の原本でOK | 公認会計士協会 |
9 | 直近2年分の住民税課税証明書原本 | 平成29年度に申請したので、平成27年度の所得と平成28年度の所得に関する課税証明書を提出 | 役所の窓口 |
10 | 身分証明書 | 破産宣告してないみたいなものを証明する書類。発行日から3ヶ月以内 | 本籍地の役所。郵送請求OK |
11 | 登記されていないことの証明書 | 青年被後見人、被補佐人、被補助人として登記されていないことを証明するもの。発行日から3ヶ月以内 | 法務局。郵送請求OK |
12 | 念書 | 6ヶ月以内に申請情報は変更しませんという同意書 | 税理士会から直接もらう |
13 | 事務所付近の略図について | 面接に来る場合に必要なカンタンな地図 | 税理士会から直接もらう |
14 | 登録手数料 | 5万円必要です。東京税理士会の場合は書類提出時に現金で払いました | 申請時に5万円用意するだけ |
15 | 業務執行に関する誓約書 | どこかの会社に勤めながら税理士登録する場合、その会社の社員として税理士業務は行いませんという誓約書 | 税理士会から直接もらう |
16 | 賃貸借契約書 | 賃貸マンションの場合その契約書 | 契約時にもらっているはず。なければ管理組合等から取り寄せ |
17 | 税理士事務所設置に関する誓約書 | 管理組合等から同意を得られない場合に記載 | 税理士会から直接もらう |
18 | 間取図 | マンションの部屋の間取り図を記載します | 税理士会から直接もらう |
必要書類を画像でも見てみましょう。
代表的な書類のみピックアップしてあります。
税理士登録申請書
まずは申請書を作成しましょう。
履歴書
これまでの経歴などを証明するために履歴書も必要です。
税理士となる資格を証する書面
自分の場合は、公認会計士登録の事務所住所を勤務先のfreeeの住所にしており自宅にしていなかったので、自宅住所に変更してから登録証明書を発行することに。
身分証明書
身分証明書として戸籍謄本も用意しました。
登記されていないことの証明書
青年被後見人、被補佐人、被補助人として登記されていないことを証明する書類も必要です。法務局にて入手することができます。
事務所付近の略図について
下手ですいません(笑)。
税理士事務所設置に関する誓約書
自宅兼事務所で、自宅が賃貸借契約の場合、事務所として契約していないことがほとんどです。なので下記のような誓約書を申請します。
間取図
事務所の間取り図も提出します。事務所付近の略図に続き下手ですいません(笑)。
面接編税理士登録の面接って何を聞かれるの
さて、無事に書類を月末までに提出出来たら、次は税理士会との面接です。翌月に下記のようなはがきが自宅に届きます。面接の日時は指定されているので、仕事を休んでいきましょう。
税理士会に到着
私の場合は、東京税理士会の品川支部のオフィスがある品川税経会館での面接です。
それでは、面接に行ってきます。
約1時間後
無事に面接が終了。
やりきりました。
気になる面接の内容ですが、「税理士登録の動機」「今後税理士としてどういった業務をやっていきたいか」「部活をどうするか」(野球部に誘われました(笑))等を聞かれました。
面接官は3人、終始和やかな雰囲気で進みました。
基本的によほど何かない限りは落とすことはないようなので、あるがままを答えれば大丈夫です。
手続きと合わせてだいたい1時間くらいで完了します。
いよいよ税理士に税理士証票交付式
面接から約1ヶ月後、税理士登録完了のお知らせがはがきで届きます。また税理士証票交付式のお知らせも郵送で届きます。
税理士証書、税理士バッジ等は、税理士証書交付式に行かないともらえないので、必ず行きましょう。平日なので仕事を休んで行くことになります。
なお、交付式では印鑑証明が必要なので、印鑑登録済んでない人はこの日までに印鑑登録をすませてしまいましょう。
交付式では、税理士法の解説等、税理士としての活動をしていくにあたっての諸々の案内を受けます。
毎月行っているらしく、自分の時で約100人くらい会場にいました。会場では、税理士証票と税理士バッジをもらいます。電子申告で必要な税理士カードは後日郵送で送られてくるとのこと。
交付式が終わると、その後は懇親会。お寿司にビールまで出てきました。
ついに念願の税理士バッジをゲット。
税理士としての身分を証明する税理士証票。なくさないように気をつけます。
最後に
いかがでしたか。
長い道のりでしたが、無事税理士登録を完了することが出来ました。
書類収集・面接等、税理士登録するにはいくつかのステップがありますので、余裕をもったスケジュールを組むことが重要です。
また、私自身は、今後は副業という形になりますが、税理士としてfreee導入支援コンサルティングや、freeeを活用した経理代行業務等、新しい公認会計士・税理士の形を模索していきたいと考えています。
副業で学んだノウハウをどんどんためて、本業のプロダクト開発にも生かしていこうと思っています。
freee認定アドバイザーとしての登録も行いましたので、第二の肩書を持って今後は活動していきます機会があれば税理士として学んだ知見をWEBなどでみなさんにお伝えしていきますので、引き続きよろしくお願い致します。
※本記事は公認会計士ナビに掲載された記事を一部改変して掲載してあります。元記事はこちらをご覧ください。