所属税理士制度について2回に渡って解説してきた本シリーズ。今回がいよいよ最終回です。
今回は「所属税理士」が勤務する会計事務所や税理士法人を離れて、独立するケースについて解説します。
前回、前々回の記事は以下をご参照ください。
- 所属税理士なら勤務しながら独立が可能!?補助から所属税理士への主要な変更点を解説-所属税理士制度とは?(1)
- 所属税理士ってクライアントとどう契約したら良いの?気になる契約や責任の範囲について解説!-所属税理士制度とは?(2)
所属税理制度は、次代を担う所属税理士の独立開業の一助となりつつ、責任の所在を明確化し納税者保護を図るという観点から制度改正が行われています。
そのため、所属税理士が開業税理士として独立する場合にも、制度改正の趣旨を踏まえつつ独立準備を行う必要があります。そこで論点となる部分について、今回も日本税理士会連合会の「所属税理士制度(税理士法施行規則第1条の2)に関するQ&A」を参考に、お伝えいたします。
1:「そろそろ独立」の時期。独立準備はどこまでできるか
(1)独立への第一歩。事務所設置ができるのはいつから?
直接受任をして経験を積んできた、所属税理士の大原さん。お客さんも増え自信もついてきたので、そろそろ独立を考えています。
そこで、勤務しながら自分で事務所を持ちたいのですが、改正所属税理士制度では所属税理士が自身の事務所を持つことは認められているのでしょうか?
残念ながら、所属税理士は自らの事務所を設置することは認められていません。制度変更されても、所属税理士の本来業務は補助業務にあるためです。
そのため、開業税理士として登録し直してから、改めて準備をする必要があります。
税理士法第40条第1項及び施行規則第18条より、所属税理士は自ら事務所を設置することはできません。(所属税理士に関するQ&A: Q&A22)
(2)事務所はダメでも、アルバイトやパートを雇うことはできる?
事務所の設置を諦めた、所属税理士の大原さん。とはいっても自分で直接受任したクライアントもあるし、独立に向けての事務作業もあるので、アルバイトかパートを雇いたいと思っています。独立前に自分で使用者を雇うことはできるでしょうか?
所属税理士の本来の業務は、あくまで補助業務にあり、事務所の設置は認められませんでした。使用者を雇うことも同様の趣旨で認められていません。
クライアントの確保以外は、所属税理士をやめてから準備することになります。
ただし、必要な場合は、使用者税理士等との協議のうえ、一時的に使用者税理士の勤務使用人を借りることは可能です。
所属税理士は使用者税理士等の事務所に勤務する使用人であり、本来業務は補助業務であることから、自らの使用人その他従業者を持つこともできません。ただし、使用者税理士事務所に勤務する使用人を、使用者税理士と協議のうえ、一時的に借用することは可能です。(所属税理士に関するQ&A: Q&A24参照)
2:直接受任したクライアントを開業先に引き継ぐ方法
所属税理士として受任した契約の取扱いは?
所属税理士の大原さんは、いよいよ独立を決意しました。所属税理士として直接受任した契約を、開業先の事務所に引き継ぎたいと考えています。そこで開業後も契約を引き継ぐために、何か注意することはありますか?
所属税理士として締結していた契約は、所属税理士から開業税理士に登録変更が完了してから再締結することになります。クライアントの申告時期を勘案したうえで、先方に迷惑がかからない時期に再締結できるように、独立のタイミングに配慮すると良いですね。
また、所属する会計事務所内の手続きとして、使用者税理士等に契約終了の報告を行う必要があります。
開業税理士に登録変更するときまでに、使用者税理士等に対して施行規則第1条の2第7項の終了の報告を行う必要があります。登録変更後速やかに、開業税理士名義で再締結することが適当です。(所属税理士に関するQ&A: Q&A27参照)
以上、改正所属税理士制度の気になる改正点を、シリーズで3回に分けてお伝えしました。
将来の独立を考える税理士にとって有利な制度になった反面、それなりの手続きが必要だということがご理解いただけたかと思います。
この記事で、若手税理士の活躍の場を広げる所属税理士制度への認知度が高まり、税理士業界に浸透するきっかけになれば幸いです。
(ライター 大津留ぐみ)
<参考>
<免責事項>
本記事は、日税連「所属税理士制度に関するQ&A」(平成26年10月15日)の情報を参考に執筆しており、最新の情報であることを保証するものではありません。法令・規則等は変更となる場合がございますので、最新の情報をご確認の上、各事項に関してご判断頂くようお願い致します。