さて、前回の投稿からかなり時間が空いてしまいましたが、会計事務所や税理士がマーケティングにWEBサイトを活用するための方法について引き続き解説していきます。
前回と前々回の内容はこちら。
- 会計事務所や税理士がブログで集客するには!?参考にすべきブログはこれだ!:会計事務所のためのWEBサイト活用術vol.1
- 税理士や会計事務所はブログをどう書くべきか?意識すべき3つのポイント:会計事務所のためのWEBサイト活用術vol.2
第1回と第2回では、会計事務所や税理士がWEBやブログを活用したコンテンツマーケティングで集客するための注意点を解説しましたが、今回は過去2回の内容を踏まえて、「では、どのような分野にチャンスあるの?」ということを解説します。
WEBマーケティングに効果がありそうな5つの分野
競争が厳しくなってきたと言われる税理士業界ですが、会計事務所や税理士の業界では主に下記のような分野にWEB(ホームページやブログ)での集客チャンスがあると思われます。
- 相続税
- IT・WEB関連業界(主にベンチャーやスタートアップ)
- 中小企業のための海外取引、国際税務
- 税務調査対応
- 業界特化(飲食や小売業などの小規模事業、医療・病院、建設業など特殊な業界)
他にもあるかもしれませんが、いずれの分野に関しても共通しているのは、
- ターゲットが多い、もしくは、マーケットが拡大している分野である
- 専門としているプレーヤー(会計事務所や税理士)が多くない
という点です。
この視点から前述の5つの分野を見てみましょう。
(1)相続税
相続税分野に関しては、相続税法の改正によって相続税申告の対象者が増加することから、マーケットが拡大している分野といえるでしょう。
一方で、相続税専門の会計事務所は業界でも一部に限られますので、プレーヤーは少なめです。
ただし、SEOやリスティング広告(GoogleやYahoo!に表示される広告)は資金力のある業界上位の相続税専門会計事務所の寡占状態となっているので、正面から勝負するのは難しいでしょう。
また、相続税業務の実績があまりないのに、「●●相続相談センター」のようなサイト(ランディングページ)を作成することによって、うまく相続税業務を受注しようと考えている会計事務所も一部には見られます。
このように、一見するとWEBからの集客は寡占状態ですが、じっくりとWEBを見てみると、前回と前々回で解説したようなコンテンツマーケティングを相続税分野でしっかりと行っている会計事務所や税理士はほとんど見当たりません。マーケットも拡大中であることから、いち早く取り組むことによってチャンスがある分野だと思われます。
(2)IT・WEB関連ベンチャー(スタートアップ)
現在、東京では空前の起業ブームです。IT・WEB分野を中心に起業家が増え、ベンチャーキャピタルや監査法人が主催する起業イベント、IPOイベントなどもそこかしこで見受けられるようになりました。
先日はトーマツグループが起業・ベンチャー支援イベントを全国的に展開していくとのニュースをリリースするなど、今後は全国的に起業が後押しされていくかもしれません。
このIT・WEB分野に関しても、以下の点からWEBマーケティングに適していると考えられます。
- 成長分野であり、専門の税理士が多くない。(むしろ、税理士はITが苦手)
- IT・WEB分野の起業家はWEBから集客しやすい。(WEB集客との親和性が高い)
- 高度な内容でなくともよくある悩みや当たり前の処理を取り上げるだけでコンテンツが作れる。
特に3に関しては要注目なのですが、第1回で紹介した「経営ハッカー」や「inQup」などのサイトを見てみると、税理士からすると当たり前の内容がほとんどで執筆自体は決して難しくありません。WEBやIT分野の用語や業界の特徴さえ理解してしまえば実は集客しやすい分野であると考えられます。
(3)中小企業のための国際税務、海外取引
近年、会計事務所業界でトレンドとなっているキーワードの一つが「海外進出支援」でしょう。この数年で中小企業の海外進出が増加してきていることから、それをビジネスチャンスと捉える会計事務所が増えてきています。
同分野の特徴としても、前述のようなふたつの特徴が見受けられます。
- ターゲットとなる「海外進出を志向する中小企業や海外取引が増えている中小企業」が増加している。
- 中小企業や経営者が気にする細かいノウハウを取り上げているところは少ない。
特に2に関しては、BIG4税理士法人などが大企業向けの本格的な国際税務トピックス(高度な移転価格や租税回避スキームなど)は取り上げていますが、中小企業向けのノウハウを取り上げている会計事務所はほとんどありません。
もちろん、国際税務や海外取引に関しては、専門性が高く、仮に集客したとしてもサービスの提供が難しいケースも多いため、この分野に対応できる会計事務所はわずかかと思いますが、ノウハウのある会計事務所であればチャレンジしてみるのもありだと思います。
(4)税務調査対応
税務調査対応はノウハウが必要になりますが、広範囲から注目を集める分野です。
この分野では、税理士向けの税務調査対応のメルマガやセミナーが積極的に開催されていますが、一般企業向けにノウハウを配信しているものは多くないですので、マーケティングには効果があるでしょう。
特徴としては、
- 税務調査はどの企業も意識する内容である⇒ターゲットが多い
- 利益が出ている企業ほど興味を持ちやすい⇒優良企業がターゲットに含まれやすい
- セカンドオピニオンなどの仕事を得やすい
と言った点が挙げられます。
ただし、「脱税と節税の区別がついていない企業」や「脱税目的の企業」からの問合せも増える可能性はありますので、ブランディングの方向性やコンテンツの内容には注意が必要です。
(5)業界・業種などに特化(飲食・小売等の小規模事業者、医療、建設など)
(2)のIT・WEB分野も広義ではここに含まれますが、特定の業種にターゲットを絞る方法もあります。
この分野は、成長産業であるかどうかは業界によって異なりますが、会計事務所業界では、「相続専門」「医療専門」「外資系企業専門」といった会計事務所は関東や関西の一部で見受けられるものの、特定の業界や業種にターゲットを絞った会計事務所はあまりありませんので、専門とするプレーヤーはどの分野でもあまり多くないと考えられます。「飲食店」や「小売」「建設」などに絞ることによってWEB上で効率的に集客できる可能性があります。
ただし、関東や関西など企業数が多い地域では特定業種に絞っても集客できますが、地方ではターゲットが少ない可能性はあるので注意は必要です。
WEBマーケティングは意外とどの分野でもチャンスがある!?
通常の業界であれば、どの分野に関しても1社くらいはWEBでうまく集客している有名なプレーヤーがいたりするのですが、会計事務所や税理士の業界では、WEB分野に詳しいプレーヤーが少ないこともあり、コンテンツマーケティングに関しては意外とどの分野でもチャンスはあるのではないかと思われます。
また、(5)で取り上げたように、会計事務所・税理士業界では、WEB上でのマーケティングに限らず、業界全体としては「差別化」が意識されていない状況です。
こういった点をヒントに自分の会計事務所がどこをターゲットにビジネスを展開していくかを検討してみるのも良いかもしれません。
なお、今回とりあげた5分野の中のいくつかについては、次回以降でさらに詳しく解説していきます。