いよいよ今年(平成26年)の税理士試験が近づいてきました。今年の税理士試験は8月5日から8月7日にかけて行われます。
ところで、会計事務所業界では「税理士試験の受験者が減っている」と言われますが、本当なのでしょうか?また、もし本当であればどれくらい減っているのでしょうか?会計事務所名鑑では、税理士試験の受験者数や合格者数、その推移についてまとめてみました。
税理士試験の受験者は5年間で9,000名減少!今後も減少傾向は続くのか!?
過去5年間の税理士試験を調べてみると、受験者数(全科目の受験者数の総数)は平成21年の74,547名から平成25年の65,518名まで(延べ)9,029名*も減少しています。その減少率は約12%です。
※税理士試験では複数科目を受験している人がいますので、実際は9,029名よりも少ない人数になります。(延べ9,029名となります)
グラフを見てみると特にこの3年間での減少が大きいですが、この傾向が今後も続くのか、それとも、ここで下げ止まるのかが今後の業界の活性化に影響してくるといえるでしょう。
簿記論・財務諸表論の減少率が大きい -新しく税理士を目指す人が減っている!?
大きく減少する簿記論・財務諸表論の受験者
では、次に科目ごとの受験者数をチェックしてみましょう。
グラフをご覧頂くと一目瞭然ですが、簿記論と財務諸表論の受験者数が特に大きく減少しています。
- 簿記論の受験者数:24,468名⇒19,935名(減少数4,533名/減少率18.5%)
- 財務諸表論の受験者数:18,626名⇒16,137名(減少数2,489名名/減少率13.3%)
これらは母数が多いため減少人数も多いとも言えますが、他の科目と減少率を比較してみてもその減少率の高さがよくわかります。
- 簿・財以外の科目の受験者数の合計:31,453名⇒29,446名(減少数2,007名/減少率6.3%)
このように、他の9科目は合計でも6.3%(2,007名)しか減少していないにも関わらず、簿記論は18.5%(4,533名)、財務諸表論は13.3%(2,489名)の減少となっており、減少率もその他の科目の2~3倍となっています。
税理士を目指そうとする人が減っている!?
また、このことからひとつの事実が推測されます。
それは、新規で税理士を目指す人が減っているのではないかということです。
というのが、税理士を目指したことがある人であればご存知の通り、簿記論と財務諸表論は、税理士を目指す人たちが最初に受験する傾向のある科目です。一方で、一度、勉強を始めたり、ひとつでも科目に受かったりした方(特に簿・財に受かっている方)であれば、途中で勉強を辞めるのももったいないため、翌年以降も受験を継続する傾向があり、税法科目の受験者数は減りにくいと考えられます。
そのため、簿記論や財務諸表論の受験者が減っているということは、今まで税理士を目指していた人は引き続き試験にチャレンジしているが、新しく税理士を目指そうとしている人は減っているのではないか、、、と推測されるのです。
近年は「税理士業界も厳しい」「税理士は独立しても食べていけない」といった話もよく聞かれるようになってきたため、リスクをとって税理士を目指してもリターンが少ないと考える人も増えているのかもしれません。
合格率はややアップ!?
一方で、税理士試験の合格率はどうでしょうか?
合格率*に関してはややアップしている傾向が見られます。
※合格率=各科目の合格者の総数/税理士試験の受験者総数
各科目の合格者の総数を税理士試験の受験者総数で割ってみると、上記のグラフのように直近3年間は合格率が高くなっています。つまり、この3年間は税理士試験を受験した人の中で何らかの科目に合格した人の数が多かったと言えます。
これに関しては、もちろん、誤差の範囲ということもありえますし、正確な理由はわかりませんが、簿記論や財務諸表論を初めて受ける初学者が減ったことにより、相対的に、税理士試験の受験が初めてではない受験者の比率が高まった可能性があります。そのため、数回目の受験であれば合格できる可能性も高まるわけであり、全体の合格率アップにつながったのではないかと推測できます。
いかがだったでしょうか?受験者数が減少していると言われる税理士試験ですが、そのデータを分析してみると、このような傾向が見えてきました。
次回以降は国税三法(法人税・所得税・相続税)や個別の科目についても分析していきます。ご期待ください。
→最も合格しやすい5科目はこれだ!税理士試験科目の合格率を分析してみた:税理士試験分析(2)